教室構成員の紹介
教室構成員一覧 鈴木 圭輔
プロフィール
「獨協」との縁
まず初めに,私は獨協とは深い縁がございます.私は獨協医科大学病院で生まれ,中学,高校,大学を獨協で過ごし,人生の7割以上は獨協に囲まれて歩んでまいりました.虫垂炎で小児期に獨協医科大学病院で入院し手術を受けたこと,父親と叔父が当時の獨協医科大学内分泌代謝内科に勤務していたため,よく医局に連れて行ってもらったことなど,人生における「獨協」の思い出が多くあります.
脳神経内科医を目指した経緯
脳神経内科では,1.当時は現在よりも原因不明で治療法のない難病が多く,2.これから疾患・病態解明が進んでくる分野であること,3.診断には検査よりも,打腱器を使った系統的神経診察が重視されていることに興味を持ちました.患者さんの主訴や病歴,神経診察の結果,推定される障害部位や病因を推定し,精査していく「神経内科(現在の標榜診療科:脳神経内科)」に憧れ,2001年獨協医科大学卒業後,平田幸一先生(前任教授)が主催される内科学(神経)へ直接入局しました.平田先生からは入局以降多くの指導を賜りましたが,その中でも日頃より医師として2.患者さんのためには命をも賭して果たさねばならない責任という「Noblesse Oblige」の精神,強い意志の表れである「思いは必ず実現する」という言葉に強い影響を受けました.
研修医生活と研究
まだ臨床研修医制度の導入前でしたので入局後は,一般内科診察も含めて,神経内科の先生方の指導を受けました.当時は今考えると至らない点が多くありましたが,神経診察を日々ルーチンで行っていくことで,自分自身の臨床能力を向上させ,結果的に適切な診断・治療を患者さんへ提供するという目標のもと,充実した研修医生活を過ごしました.大学院の4年間では宮本雅之先生,宮本智之先生ならびに平田幸一先生の指導の下で,パーキンソン病患者さんを対象に,直腸温測定による概日リズム障害の検討や質問票を用いた睡眠障害の検討を行いました.今では様々な研究結果が蓄積されているパーキンソン病の非運動症状の一つである睡眠障害と,疾患重症度を含めた臨床症状との関連を明らかにすることができました (Suzuki K et al, Mov Disord 2007;22:1245-51; Suzuki K et al, Neuropsychobiology 2007;56:172-9; Suzuki K et al, Parkinsonism Relat Disord 2009;15:15-9; Suzuki K et al, J Neurol Sci 2008;271:47-52).
海外留学
大学院修了後,英国インペリアルカレッジロンドン(Department of Investigative Medicine, Section of Investigative Science)に留学する機会を頂きました.その教室は内分泌科医である父,叔父の留学先でもあり,当時のStephen R. Bloom教授が幸運にもまだ主催されていました.抗肥満薬の開発のため,肥満のマウスやラットモデルに食欲抑制作用により体重減少の期待されるペプチドを注射し,体重を連日測定するfeeding studyに参加しました.マウスは軽いのですが,ケージが重く筋肉痛になったのを覚えています.また,当時GLP-1やghrelinをはじめとした消化管ホルモンがパーキンソン病の動物モデルで神経保護効果を発揮するという論文がいくつかpublishされました.そこで同様にSH-SY5Y細胞 (ヒト神経芽細胞腫)などを用いて,消化管ホルモン(GLP-1, ghrelin, PYY等)はMPP+や6-OHDA処理によるドパミン神経細胞死に対して神経保護効果を示すかどうか細胞実験を行いました.結果的には何回かはpositiveな結果は示せたものの,再現性のある均一で良好な結果は示すことはできませんでした.しかし近年,多くの神経疾患では脳と消化管との密接な関連性”脳腸連関”が注目されており,留学中に食欲調節における視床下部の役割や多くの消化管ホルモンの関与に関して学び,いくつかの総説にまとめる事ができたことは非常に良い経験となりました.
留学体験記
(Suzuki K et al, Endocr J 2010;57:359-72, doi: 10.1507/endocrj.k10e-077; Suzuki K et al, J Obes 2011:528401, doi: 10.1155/2011/528401; Suzuki K et al, Exp Diabetes Res 2012:824305, doi:10.1155/2012/824305)
帰国後の研究
2010年帰国後は,臨床では主にアルツハイマー病やパーキンソン病などの変性疾患や睡眠関連疾患の診療に従事し,睡眠を軸にしたパーキンソン病や片頭痛患者の臨床研究,睡眠関連疾患患者を対象にした臨床研究を続けてまいりました(鈴木圭輔ら,神経治療 2017;2:309-18, doi: https://doi.org/10.2169/naika.106.309).
業績
国民の5人に1人は何らかの不眠症状で悩んでいます.特に高齢者では加齢に伴う睡眠構築の変化により睡眠は浅くなり,共存症や服薬の影響により多彩な睡眠障害を認めます (鈴木圭輔ら, 日内会誌 2014;103:1885-95, doi: https://doi.org/10.2169/naika.103.1885).
良い睡眠は脳や体の回復,記憶の増強のほか,覚醒中に蓄積する有害物質や異常蛋白の除去に働くこともわかってきました.従って睡眠障害がアミロイドβなどの異常蛋白の蓄積を促進させ,アルツハイマー病などの神経変性疾患の発症に関わる可能性も注目されてきています.レム睡眠行動障害(RBD)はパーキンソン病,レビー小体型認知症や多系統萎縮症などのαシヌクレイノパチーへ長期的には高率に進展することから,特にパーキンソン病やレビー小体型認知症などのレビー小体病の前駆状態として,疾患修飾治療の候補として注目が集まっています.睡眠と神経疾患に関する臨床研究も引き続き行っていきます.
研修希望の先生へ
略歴
2001年3月 獨協医科大学医学部医学科卒業
2001年5月 獨協医科大学病院神経内科 臨床研修医
2003年4月 獨協医科大学大学院内科学(神経)入学
2007年3月 獨協医科大学大学院内科学(神経)修了
2007年4月 獨協医科大学内科学(神経) 学内助教
2007年4月 獨協医科大学越谷病院内科 学内助教
2008年4月 英国Department of Investigative Medicine, Section of Investigative
Science, Imperial College London 留学
2010年4月 獨協医科大学内科学(神経) 学内助教
2012年5月 獨協医科大学内科学(神経) 学内講師
2017年4月 獨協医科大学内科学(神経) 学内准教授
2020年4月 獨協医科大学内科学(神経) 主任教授
所属学会
日本神経学会,日本内科学会,日本睡眠学会,日本脳卒中学会,日本パーキンソン病・運動障害疾患学会,日本脳神経超音波学会,日本頭痛学会,日本自律神経学会
American Academy of Neurology, International Parkinson and Movement Disorder Society, American Academy of Sleep Medicine, International Headache Society
専門医資格
日本内科学会認定内科医,総合内科専門医
日本神経学会専門医・指導医
日本睡眠学会専門医
日本脳卒中学会専門医・指導医
日本頭痛学会専門医
学会活動
日本神経学会 代議員,頭痛セクションコアメンバー
日本頭痛学会 代議員
日本睡眠学会 評議員
日本神経治療学会 評議員
日本自律神経学会 評議員
日本脳神経超音波学会 評議員
編集委員
BMC Neurology,Associate editor (Movement Disorders section)
主な受賞歴
平成25年度 獨協医科大学 関湊賞(研究業績)
平成30年度 獨協国際医学教育研究財団賞(研究業績)
2019年度 いしがね海老原財団Neuroscience Awards「教育/診療」業績分野:パーキンソン病の睡眠障害の臨床的意義
令和元年度 獨協国際医学教育研究財団賞(研究業績)
研究活動
2011年 獨協医科大学研究助成金・奨励賞(個人研究)
「睡眠時無呼吸症候群における持続陽圧呼吸療法前後のグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)値の変化」
2012年 日本睡眠学会平成24年度臨床睡眠若手研究者助成制度
「睡眠関連疾患における頭痛の性状,一次性頭痛の有病率およびその背景因子の検討」
2015年 獨協医科大学研究助成金・奨励賞(個人研究)
「パーキンソン病関連疾患の睡眠障害:パーキンソン病睡眠スケール(PDSS)-2を用いた検討」
2016年―2019年 文部科学省科学研究費補助金 若手研究B JP16K21319
課題名:神経変性疾患における血清インスリン様成長因子1と臨床症候との関連
代表研究者.
2019年 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
「種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上」分担研究者.代表者名:平田幸一
2019年〜厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・導尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「健康づくりのための睡眠指針2014」のブラッシュアップ・アップデートを目指した「睡眠の質」の評価及び向上手法確立のための研究」レビューボード(研究推進委員会)チームメンバー.代表者名:栗山健一